Sunday, January 29, 2017

しばいぬ

今住んでるところに越してきた時、近所に犬がいた。10年くらい前のこと。

そいつは柴犬でとにかく番犬としては最高の部類に入る犬で
ぼくがその家の前を通り過ぎるとそいつの視界から消えるまで
まあ それはものすごい声で吠え続ける。
誰が通っても同じようにバカみたいに吠える。

当時はバンド活動も頻繁だったから
真夜中に通ることもあったし、明け方飲んでかえってくることもあった。
だけどどんな時であろうと
とにかく狂ったようにまた吠える。

飼い主もたまったものではない。
うるさい! と窓から声がする。
しかし犬は悪いわけではない。だって番犬なんだから。
もちろんおれだって悪くない。 と思う。 

ぼくはあんまり犬に吠えられたりすることがなかったので最初は
それなりに悲しかったけど、あまりにも毎回吠えるので
いい加減におまえはおぼえろよ ばかやろう と

だんだん腹が立ってきて
何度かわざと長い時間その家の前に立ってやったことがある。
当然吠える ざまあみろ 疲れるだろ と思いながら
おれに吠えるからこういう目にあうんだ などと
思っていた日もあった。

ある日の真夜中のこと 
ぼくは原付バイクで帰ってくるとその家の前で思いっきり転倒した。

道は真っ暗で かつ、たまたま工事中だったらしい
道路にでかい穴が空いていたのだ。 

ものすごい音でこけたものだから
犬は当然出てきてものすごい声でまた鳴きわめきはじめる。
ぼくも足から血がでていて痛くて動けないから
倒れたバイクのエンジンはうなりをあげたままだ。


家の人もたまらず出てきて
あんた何やってんですか!? と言うがこっちだって相当つらい、痛い。
「こけただけっすよ! それよりねおたくのわんちゃんがね うるさいんっすよ!」 

以来、ぼくはだんだんその道を通るのを避けるようになっていった。


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今日久しぶりにその道を 通ったら
あの柴犬 まだいた。

あ、あいつだ。
 少し太ってるな。 そしてこちらを見ても吠えることなく
つぶらな瞳はうるうるしている。

 なんだよ 吠えろよ 元気でいろよ ばかやろう と思いつつ家路につくのであった。